ちまたには、「接骨院」「整骨院」そして「整体院」があふれていますが、「症状はあるけど、どこに行ったらいいのかわからない」という人が多いのも事実。
今回は、これらの施設の正しい選び方や問題点について解説します。ぜひ、参考にしてくださいね♪
そもそも整骨院・接骨院とは?
「接骨院」(せっこついん)や「整骨院」(せいこついん)は、骨折や脱臼、捻挫、打撲、挫傷(筋肉や腱などの軟部組織の損傷・肉ばなれ等)に対して、ケガをした幹部に注射や内服薬を使用せずに、保存的治療(注射や手術を行なわない治療のこと)を行なう施設です。
接骨院・整骨院では、人間が持つ自然治癒力を施術によって引き出し、回復力を早めことが最大の特徴であり、専門家が、ケガの種類や程度を見分け、そのケガに合った適切な治療を行ないます。
「整骨院」と「接骨院」の違いは?
「整骨院」と「接骨院」の違いはなんでしょうか?
実は、「整骨院」と「接骨院」は呼称が異なるだけで、どちらも国家資格である「柔道整復師」が責任者であう施設です。したがって、院内で行われる施術に大きな違いはありません。
国家資格「柔道整復師」とは?
「柔道整復師」とは、日本の国家資格の一つで、体のケガや痛みを治すための治療を行う専門家のことです。特に、スポーツ選手が受けるケガや、日常生活での筋肉や関節のトラブルを診療し、マッサージやストレッチング、テーピングなどの手法を用いて対処します。
この資格を持つことで、接骨院を開業することができるようになります。
資格を取得するために、大学や専門学校で学習し、国家試験に合格することが必須です。国家試験は、実技試験と筆記試験があり、柔道整復の技術だけでなく、解剖学、生理学、病理学など幅広い知識が求められます。
「整骨院」という名称は、厳密にいえば違法?
「柔道整復師」の職務内容や権利、義務、罰則を規定した「柔道整復師法」という日本の法律があります。「柔道整復師」はこの規定の則って、施術を行います。
この「柔道整復師法」の中に、広告(看板など)について定めた項目があります。
接骨院がチラシや看板等で広告できる内容は、この項目によって規定され、原則、「広告の制限」で認められていない内容は掲載できません。
柔道整復師法における広告の制限(広告の制限)
第二十四条 柔道整復の業務又は施術所に関しては、何人も、文書その他いかなる方法によるを問わず、次に掲げる事項を除くほか、広告をしてはならない。
一 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
二 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
三 施術日又は施術時間
四 その他厚生大臣が指定する事項(※)2 前項第一号及び第二号に掲げる事項について広告をする場合においても、その内容は、柔道整復師の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。
〈柔道整復師法第二十四条第一項第四号の規定に基づき、柔道整復の業務又は施術所に関して広告し得る事項◇平成11年4月1日から適用〉※【広告し得る事項】
一 ほねつぎ(又は接骨)
二 第十九条第一項前段の規定による届出をした旨(平成28年6月29日追加)
三 医療保険療養費支給申請ができる旨
(脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
四 予約に基づく施術の実施
五 休日又は夜間における施術の実施
六 出張による施術の実施
七 駐車設備に関する事項【広告し得る事項】二について
都道府県知事に開設の届出をした旨のこと
出典)全国柔整鍼灸協同組合|接骨院等の広告規制 ダウンロード可
https://www.zenjukyo.gr.jp/koukokukisei/
この項目の中に、「広告し得る事項」があり、そこには「ほねつぎ(又は接骨)」という記載しかなく、「整骨」というワードは記載されていません。
これはつまり、厳密にいうと、「整骨院」という看板を掲げることは違法である、ということです。
広告の違法なのに、なぜ「整骨院」があるの?
「柔道整復師法」で許可されていないのに、なぜ「整骨院」という名称を使用している施設が多いのでしょうか。
これまで、行政上の判断や、慣例的に「整骨院」という名称が許可されることが多々ありました。なぜ「整骨院」という名称が許可されたのか、正確にはわかりませんが、保健所の職員が「柔道整復師法」という法律に精通しておらずに許可が下り、一度慣例が出来ればその後がずっと許可が下りてしまう、などの経緯が予想されます。
しかし昨今、この状況が変わろうとしています。
2023年2月に「第9回あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」が実施されました。
この検討会では、
- 新規開業者については、「整骨院」を不可とし、「接骨院(またはほねつぎ)」という名称のみ認める。
- 開設届出済みの施術所については、当面の猶予期間をもって名称の移行を進める。
などの検討が行われました。
検討の理由としては、利用者が、整体や整形外科、形成外科などと混同してしまう、紛らわしいのではないか、というような理由があるようです。
今後、「整骨院」は姿を消し、「接骨院(またはほねつぎ)」のみになる可能性が高いです。
「接骨院・整骨院」は健康保険が使えるのか?適用例は?
「接骨院・整骨院」では、施術の際、健康保険が使えるのでしょうか?
結論から言うと、接骨院・整骨院では、健康保険証が仕える場合と使えない場合があります。
健康保険を使える場合
接骨院で保険が使えるのは、骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)の施術を受けた場合です。ただし、骨折及び脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です。
健康保険を使えない場合
単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は保険の対象になりません。このような症状で施術を受けた場合は、全額自己負担になります。
また、保険医療機関(病院、診療所など)で同じ負傷等の治療中は、施術を受けても保険等の対象になりません。
柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについては、厚生労働省の公式サイトも大変参考になるので、ぜひご参照ください。
》厚生労働省|柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて
接骨院・整骨院と「整体院」の違い!整体院は保険適用できる?
ここまで、接骨院と整骨院には名称以外の違いはない、と解説しました。
もうひとつ、接骨院や整骨院と似たような施設に、「整体院」があります。
「接骨院・整骨院も整体院も、マッサージとかで体の調子を整えるところ」と、両者の違いを理解していない利用者も、実は多いのですが、接骨院・整骨院と整体院には明確な違いがあります。
違いその1)整体をする「整体師」は、国家資格ではない
1つ目の違いは、整体を行う整体師は、「柔道整復師」とは違って、国家資格ではない点です。
整体師は民間資格であり、しかも、資格を取得しなげれば整体師になれないわけではなく、無資格や未経験の人でも整体を行うお店で働くことができます。
もちろん、国家資格ではないから一切信頼できないというわけではありません。技術はもちろん、人の身体の筋肉や骨格などの知識をしっかりと学び、正しい施術を行ってくれる整体院も多くあります。
違いその2)健康保険は適用されない
接骨院の施術には、保険適用になるものもありますが、整体師が行う施術は、健康保険が適用されません。全て自費です。
「整体院」を選ぶときの注意ポイント
整体院選びの際、重視すべきポイントは多々あります。主なポイントをご紹介します。
ポイント1)その症状は整体院で治るのか?肩こりやぎっくり腰で整体院はOK?
まず1つ目のポイントは、治療法が自分の体調や症状に適しているかどうかです。
ぎっくり腰、捻挫、肉離れなどは整体よりも接骨院ないしは医療機関を受診すべきです。健康保険の効きますし、場合によっては内服薬などが必要な場合もあるので、整体院は適していません。
慢性的な肩こり、ダイエット目的の骨盤矯正などは、基本的に健康保険適用外なので、接骨院でも整体院でも、自分に合った施設を選ぶのが良いでしょう。
ポイント2)整体師の技術や経験はどうか?マッサージで症状が悪化することも!
ポイント2は、整体師の技術や経験です。
前述したように、整体師は国家資格ではなく民間資格であり、そもそも資格がなくても職に就ける分野です。であればこそ、整体師本人の技量が非常に重要になってきます。
稀に、整体院で体中ぼきぼきとマッサージされ、かえって症状がひどくなったという方もいらっしゃいます。筋肉の凝りにしろ、慢性的な痛みにしろ、力づくでマッサージすればいいというものではありませんし、もみ返しが起こる場合もあります。
なので、一度でもおかしいと思ったらもう行かない、口コミをリサーチするなど、事前に調べることが大切です。
※もみ返しとは?
もみ返しとは、整体やマッサージで筋肉を強く押されたり、揉まれたりした際に筋肉にダメージが生じ、かえって身体に痛みや不調が現れる症状のことです。
ポイント3)衛生面はしっかりしているか?
衛生面も非常に大切です。施設内の掃除はされているか、使用しているタオルなどは清潔か、など、チェックポイントはたくさんあります。
医療機関ではないとはいえ、横になってそこで過ごすわけですから、衛生的でない施設は健康にも良くありませんし、清潔で安全な環境では、治療がより効果的になります。しっかりとチェックしましょう。
ポイント4)料金システムは明確・明瞭か?
最も大切なポイントは、料金システムです。ぼったくりのような整体院も、少なからず存在します。まずは料金システムを事前に確認し、金銭面でのトラブルをできる限り回避しましょう。
重要ポイント!「接骨院・整骨院」や「整体院」は病院なのか?
「接骨院・整骨院」や「整体院」は、病院(医療施設)ではありません。
病院では、医師免許を持った医者が治療にあたります。医師は診察や診断で、レントゲン検査やCTあるいは血液検査等を行うことができますが、接骨院・整骨院や整体院では、そうした検査を行うことは禁止されています。
注目キーワード:「医療施設」とそれ以外について
患者が病気やけがをしたときの診断、治療、もしくは予防のために行う行為を「医療行為」と言います。手術はもちろん、注射、点滴、胸部X線撮影(いわゆるレントゲン撮影)等の行為は、全て「医療行為」です。
日本では、「医療行為」は医師、もしくは医師の指示を受けた者が行うという規定があります。そして、この「医療行為」を行うことができる場所を「医療施設」といいます。
さらに、「医療施設」は大きく分けて「病院」と「診療所(クリニック、医院)」の2種があり、それぞれに役割や病床数が異なります。
詳しくは、【公務員総研|医療系公務員が勤務する「病院」の種類について】が参考になるので、ぜひご参照ください。
病院(医療施設)と紛らわしいその他の施設
接骨院・整骨院以外にも、病院(医療施設)と紛らわしい施設はあります。それが「エステサロン」です。
美容皮膚科とは、美容・美肌専門のドクターがいる「医療機関」ですが、エステサロンは「整体師」と同じく民間資格なので、資格がなくてもエステティシャンとして働くことができます。
豆知識:あん摩、鍼灸、カイロプラクティックは国家資格なのか?
接骨院・整骨院や整体院の話題に付随するのが、あん摩や鍼灸、カイロプラクティックなどの施術ではないでしょうか?
「整体で針もやってもらったよ」
「近所の接骨院は、看板に、はりときゅうって書いてあるよ」
こんな経験がある方、少なくないはずです。
ひとつずつ解説します。
あん摩は国家資格である
あん摩は、国家資格です。
正式名称は「あん摩マッサージ指圧師」といい、国家資格を受験するためには、まず大学や専門学校などのあん摩マッサージ指圧師養成コースに進学して、3年以上学ぶことが必要です。その上で国家試験を受験し、合格するとあん摩マッサージ指圧師になることができます。
鍼灸(はりやきゅう)は国家資格である
鍼灸も、国家資格です。
正式名称は「鍼灸師」であり、あん摩と同じく、まずは大学や専門学校で3年学び、その上で国家試験を受け、ご横隔することで鍼灸師になることができます。
接骨院・整骨院を開業するためには「柔道整復師」の国家資格が必要なので、同じ施設で鍼灸も行っている場合、その施設には「鍼灸師」もおり、はりやきゅうの施術は「鍼灸師」が行っている、ということです。
カイロプラクティックは国家資格ではない
カイロプラクティックは、国家資格ではありません。
現在の日本では、日本カイロプラクティック登録機構が認定試験を行っており、 試験に合格して同団体のカイロプラクターとして登録されることが、現状は唯一の「カイロプラクター」としての公的な証明になります。
しかし、国家資格ではないので、誰でも「カイロプラクター」を名乗ることはできてしまうのが現状です。
まとめ
以上、整骨院、接骨院、整体院に関する解説でした。
今回のポイントは以下の3つです。
- 接骨院と整骨院は名称が違うだけで、どちらも「柔道整復師」が責任者である。健康保険の適用は、症状によって決定される。
- 「整骨院」という名称は、今後使われなくなる可能性が高い。
- 整体院は、国家資格がなくても働ける。保険適用外の施術である。
接骨院・整骨院や整体院を利用する際は、しっかりとリサーチした上で、信頼できる施設を見つけることが重要です。
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